最大の禁忌3



出血の割には傷が浅く、ナンナは比較的早く目を覚ました。
ナンナが目を明けると、軍の仲間が皆ほっと息を吐いた。
パティやフィーは半泣きのままナンナに抱きついてくる。
「ナンナ、具合はどうだい?」
「ぁ、セリス様。
…少し気だるいだけなので、大丈夫です。
皆にも、ご心配を掛けてしまったようで…」
恐縮して応えたナンナを慌ててセリスは止める。
「あ、いいよいいよ。
…実は、リーフとアレスに怒られてしまってね。
無理な編成をするなって、さ。
私は焦り過ぎていたみたいだ。悪かったね。
…悲惨な事にならなくて、良かったよ」
そう照れたように頭を掻いて笑った。

ナンナが起き上がれるようになってから暫く時が経ち、解放軍内ではお祝い事が続いた。
というのも、解放軍の盟主セリスが、リーンと結ばれたからだ。
他にもレスターがパティと、アーサーがフィーと、
スカサハがユリアと…、次々と結ばれていった。
ナンナは幸せそうに微笑む友人達を見て、こっそり溜息を吐いた。
そっと窺うようにアレスを見ると
パティに振られたらしいリーフの愚痴を延々聞かされていて、ウンザリした風だった。

「…リーフ、何故パティが好きなんだ?
…ナンナでは駄目だったのか…?」
アレスは、リーフの愚痴が一段落ついたのを確認し以前から気になっていたことを聞いた。
…つい今さっき思いついた風を装って。
リーフはキョトンとし、大きめの瞳を心外そうに見開く。
「ナンナは好きだよ。当たり前だろ?私の大事な妹なんだから」
だから安心しろとでも言いたげに笑う。
アレスは怯み「そうか」と呟く。
ナンナと同じ事を言うんだなと、思いながら。

アレスはナンナを見た。
捜す必要もないほどナンナの金の髪が眼に入る。
ナンナの金の髪に良く映える銀の髪飾りに縞瑪瑙のイヤリング、
陶器の様な首元には黒真珠のペンダントに、菖蒲色のぴったりとしたロングドレス。
元から美しいナンナを、更に美しく彩っていた。
不意にナンナと眼が合い、アレスは心臓が飛び上がるのを感じた。
なんとなく居心地が悪くなり、アレスは視線を彷徨わせる。

ナンナはアレスが視線を逸らせた時、
寂しそうに瞳を伏せたが、意を決したようにアレスに近づいていく。
「アレス、少し向こうで話をしない?」
「行って来なよアレス。酔ってるんじゃないの。…顔が赤いぞぉ?」
ナンナの誘いを聞いて、アレスが返事をするよりも早くリーフが言う。
からかう様な物言いに、アレスは軽く小突くと立ち上がる。
いつの間にか、リーフの横にはリンダが居て、傷心のリーフを慰めているらしかった。

「皆、幸せそうだったわね…。いーなぁ、好きな人と結ばれて…」
バルコニーに出て暫くすると、ナンナはそう呟いた。
「…ねぇ、アレス。
アレスは…好きな人と一緒になれるなら、禁忌を犯してもいいと思う?
ラクチェの御両親は、同じオードの血脈だったんですって。
貴方は、それを汚らわしいと思う?
…親族同士で結ばれることは、忌まわしき事だけど…。
私は…、私なら禁を破ってでも、好きな人と一緒にいたい…」
ナンナはそういうと、アレスの瑠璃色の瞳をじっと見る。
アレスは月明かりに照らされた翡翠色の瞳を真直ぐに見返し、はっきりとした声で告げる。
「…同感だな。親族だから諦めろ、なんて言われても納得できるもんじゃない。
たとえユグドラシル大陸すべての者に非難されようとな…」
「アレス…」
ナンナは嬉しそうに、花の女神の名に相応しい笑みを浮かべた。
その笑みをアレスはずっと護って行く事を胸のうちで誓った。
たとえこの想いが、どれだけ罪深かろうと…。



後書き

 一応完結です〜。(な、何かあっさりしてしまいましたが)
いや、実を言うとね、これは4話完結予定だったんですが、
考えていた話に似てるお話があり、こりゃヤヴァイ思って抜きました。
あと、現実的問題…。この時代ってさ、輸血…、どうすんの…?
傷口にボタボタ血を垂らすわけ?血液型は?死ぬよ?悪いけど。
ライブって、流れた血液も補充してくれるわけ?ありえんありえん(笑)
助けるつもりが死んじゃった〜♪なんて、洒落にもならないし。なのでカット〜。
嗚呼、ナンナの為己の危険を顧みず腕を掻っ切って血を分け与える男の運命は!?(笑)
でも流しすぎてぶっ倒れるという展開なあたり…。
ダサいです、アレス君(笑)

まぁ、こんなんなんで、すこぶるくだらない訳でして…、
どう繋げようとない知恵捻ったくらいですね。苦労は。
管理人の色彩感覚ゼロな事はそっと触れずに置いておいて頂けたら嬉しいです。
とりあえず、誰にでも通じる宝石の漢字(重要)を入れたかっただけなので(苦笑)

んで、当たり前ですが、お二方とも「愛してしまったようぢゃ」ですね。

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