最大の禁忌1
アレスは副隊長であるナンナを見やった。
ナンナはレンスターの王子リーフ、
騎士フィンと共にアレスと同時期に解放軍に加わった。
ナンナは力こそそれ程ではないが、類い稀なる軍略の深さを買われ、
(従妹ということもあり)アレスの副官に抜擢された。
しかし、アレスはナンナが戦う力が無いに等しいのに
前衛に居るという事が疑問だった。
危なっかしく剣を振るう姿を見るたびアレスはハラハラしていた。
なぜだかこの少女が気になって仕方がない。
美しい金の髪と白金の鎧が余計に彼女を惹きたてていた。
「ナンナ、この辺りの敵はあらかた片付けた。
お前はもう後衛に下がれ」
「いえ、私は貴方をサポートするためにいるのです。
私だけ下がることはできません」
サポートという言葉を聞き、アレスは口を歪めた。
「お前がサポートするのはリーフではないのか?
未来のレンスター王妃殿?」
皮肉たっぷりに言ってしまった事に多少戸惑いながら
アレスはそうと気づかれぬよう顔を顰めた。
アレスの言葉に、ナンナは柳眉を寄せる。
「私達は、兄妹の様に育てられました。
私は私で、慕う方が居ます。
それは、リーフ様も同じです」
驚いたようにナンナを見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「リーフはお前に惚れてるんだと思っていたがな。
軍の全員がそう思ってるぞ」
「みたいですね。リーフ様が嘆いていました。
いくら好きだと言っても冗談と思われると」
アレスはとにもかくにも、脱線してしまった話を元に戻そうとした。
「そんな事はいい。お前は未だトルバドールだろう?
そんなヤツに殺られる間抜けなんていない。
戦場で捕らわれた女がどんなメに遭うか位解っているだろう」
軍内の他の女性は、それを恐れて後衛でサポートに徹している。
十分に闘える自信と実力がないと、
女性だけでなく男性でも命を落すというのに…。
「…恐ろしくない訳ではありません。
しかし、私は見ておきたいのです。
…いえ、見なければならないのです。
戦とはどんなものか…、戦が齎す遺族の怒りや悲しみを。
ノディオン王家の生き残りとして、肌で感じ王を諌める為に…。
そのために敵に辱めを受けようとも、後悔はしないと決めました」
その強い光を宿した瞳が、じっと己を見上げている。
そのことにアレスは軽い心地良さを感じた。
今迄見た事もない強く美しい瞳に、吸い込まれて行く様な錯覚を覚えた。
何もかも見透かされそうな気になり、
アレスは思わず顔をそむけ、素っ気無く告げる。
「ならば、お前が俺の傍にいる限り、お前は俺が守ってやろう。
…しかし、いつも俺が傍にいるわけじゃない。
時間が空いている時ならば、剣の稽古をつけてやる。
…王妹ラケシスの誼でな」
「ありがとうございます、アレス」
ナンナは嬉しそうに微笑んだ。
その頬は、頬紅を差したように薄いピンク色をしていた。
後書き
アレナン第一だーん。
リーナンの方御免なさい。アレナン好きなんです。
この時は、ナンナはアレスが「好きなようぢゃ」で、
アレスはナンナを「気になっているようぢゃ」です。
何時になるかわかりませんが、続きも読んでくれたら嬉しいです。
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