旅立ち
『ルージュ、気をお付けなさいね……。…元気で…』
母が泣きながら僕を見送る。
必ず戻って来てと言うのは、僕を思う母の愛なのだろうが、心からの思いなのだろうが…。
…母さん、気付いてますか?覚えてますか?
…わかっていますか?
これから僕が殺さなければいけない相手は、貴女の息子であるという事を…。
僕も、そしてまだ見ぬ双子の兄弟・ブルーも、平等な、貴女の息子であるのに…。
息子同士が殺し合うのを良しとするのですか?
どこも違わない、息子なのに……?
リージョンシップに乗る前に、キングダムを見ておこうと思った…。
故郷を立つ前に、じっくりと見ておきたくなった…。
美しい並木道…。裏の院と呼ばれる割に綺麗なリージョン…。
今まで、何気なく暮らしてきた町…。
ふと気付く。僕の行為は、単なる感傷な様な気がしなくなってきた。
頭にキングダムの姿を焼き付けている様子は、さながら別れを痛んでいる様で…。
馬鹿らしい。それが感傷でなくてなんだと言うのだろう…?
金輪際、戻れなくなるわけじゃない。
そう思い踵を返す。
シップに乗る前に、再びキングダムを見回す。
風に髪が靡き、服がはためく。
君も、今日旅立つんだよね、ブルー…。
君はどう思ってるのかな、僕のこと。
…敵?邪魔者?少しでも、兄弟って、思ってくれてるのかな…?
そうだと、嬉しいな、ブルー…。
まだ見ぬ片割れにそっと語りかける。
そして彼は、彼としてキングダムの地を踏むことは無かった……。
後書き
珍しいルージュ視点です。ルージュファンの方ごめんなさいっ!!
決着出しちゃった…。てーか、初めブルー視点で書いてて、
この流れじゃブルーが死ぬよ思って急遽ルージュ視点に変えたのです〜〜。
話は特に変わってません。それにブルーは故郷を見ておこうなんて思わんしさ。
ブルーらしさを保つ為、ルージュ君になりました。
ルージュ君のお母さんは偽です。…てーか、母親いるの?
術士達に母親がいると思わせる為に、預けます。
よく子供言うじゃない。「どーしてお母さんいないの」って。
そういう疑問を持たせない為です。
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