魔法
「わぁ、お兄ちゃんしゅごぉい!お兄ちゃんって、まほうつかい?」
年端の行かぬ少年がそう問いかける。
青年は優しく微笑むと、少年と同じ目線になる為しゃがんだ。
「ん〜、ちょっと、違うよ。…僕はね、魔術師なんだ」
「まじゅちゅち〜?」
巧く廻らない舌で聞いてくる様が可愛らしく、青年は少年の頭を優しく撫でた。
「うん。魔術師。これから色んな術を学ぶんだ」
「おべんきょう〜?僕は、おべんきょう、きらい…」
「あはは」
明るく笑った青年が、少し声のトーンを落として聞いてくる。
「ねぇ、君に兄弟って、いる?」
「うん。とってもかわいい妹がいるの。僕は、妹のためならなんだってできるよ。
だって、とってもかわいいんだ。僕のじまんだよ」
嬉しそうに言う。
「もしも、妹が突然いなくなっちゃったら、君はどうする?」
不思議そうな顔して見上げてくる。
少年から見た青年は、酷く思い詰めている様に見えた。
「お兄ちゃん、なにかかなちいの?
…僕は、エストがいなくなっちゃったら、いやだよ。だって、たった一人の妹だもん。
いなくなっちゃったら、…さびしいよ?」
青年は、打ちのめされる思いがした。
そうだ。たった一人の肉親なんだ。失って悲しいはずがない、失くして寂しいはずがない。
………今だって、こんなに寂しいのに…。
「そう、だよね。家族は、失くしたら、悲しいよね?
…それが、たった一人きりしか、いないとなると…、なおさら……」
青年は少年を抱きしめた。まだ見ぬたった一人の片割れを想って…。
「ありがとう。君のお陰で、ふっ切れたよ。…色んな柵から」
「お兄ちゃん、げんきになったの?」
少年からそう聞かれ、青年は晴々とした笑顔で少年の頭を掻き混ぜる。
「うん。…君から、とっても元気になれる魔法を、かけてもらったから…」
青年はそう言うと、ゆっくり立ち上がり少年に別れを告げ、去って行った。
少年は小首を傾げていたが、やがて満面に笑顔を浮かべ、青年に元気よく手を振った。
…きっと、あるはずだ。僕らが闘わないで済む道が…。
……きっと、きっと……!
後書き
とりあえず、最後まで暈してはいたけど、こっちのが真人間だなぁ…。
でも、子供らしくと思って舌足らずな風にやったらなんか失敗。
わけわかんなくなった。ってーか、なんか腹立ちました。
決闘少し前です。
エストって名前、とあるゲームからもってきました。
私がすこぶる好きなゲームですvv
別に星夜のイメージというわけではありません(苦笑)
BGM ZABADAK 私は羊
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