「なぁブルー」「ねぇねぇ」「あ、ブルー」「お〜いブル〜」



……五月蝿い……

何故こんな五月蝿い奴らを選んだんだ、俺は……。
これじゃ術の研究もままならんではないか…!
馬鹿者みたいにぎゃーぎゃー騒ぎおって…。
静かに時を過ごすという事がどれほど貴重か、まるでわかってないのではないか…?


……まあいい。所詮奴らは駒だ。俺があいつを殺すための手段に過ぎんのだからな…。

それまでは、精々仲間というくだらないもののフリでもしておくとしよう。


「おい、ブルー。飯でも食いに行こうぜ」
「……ああ……」





「あははっ!」「なぁにやってんだよ」「ばっかねぇ」「ドジだなぁ」



何時の頃からか、この騒がしさに慣れていた。
自分しか信じなかった俺が、段々と奴らの腕を信頼していった。
どんな局面だろうと、きっと大丈夫だと楽観視していくようになった。
こいつらがいれば、きっと総て巧くいくと…。きっと道が開けると…。

何時からだろう…?

ライザが、エミリアが作る料理を美味いと感じるようになったのは…。
(今まで味など感じていなかったのに)
リュートの奏でる音楽を、暖かいと思うようになったのは…。
(そんな暖かさなど、知らなかったのに)
ゲンのくだらない洒落を、素直に笑えるようになったのは…。
(楽しさなど、理解していなかった)

何時から俺はこんなにも変わってしまったのだろうか…?
自分が変わったことへの不安と、少しばかりの幸福…。



あいつらが死のうがどうなろうが、構わなかったのに…。
只、利用するために共にいたつもりだった…。
だが今は、誰よりもあいつらに死んで欲しくないと思う。
あいつらは、馬鹿者みたいに何時までも笑っていて欲しいと思う。

こんなにも変わってしまったのは、お前の影響なのか…?

……ルージュ……。


そう、問いかけても、勿論返事なんかなくて…。
俺は少しの孤独感を味わった。



文字通り、地獄の入り口が開いて数刻、一人夜のキングダムを走る。

俺だけでいい。キングダムの犠牲になるのは、俺だけでいい。
あいつらは関係ないから…。
…これは、キングダムの術士の使命。
キングダムの術士の宿命…!




「おいブルー、一人で行くつもりか?」
眼前に見覚えのある人影があった。
「私たちが一緒に行ってあげるわ」
ブロンドの女が。
「一人で行っても、だぁれも褒めてなんかくれないぜぇ〜」
青玉の髪の男が。
「一人より二人って言うでしょ?貴方は、私たちの大切な仲間なんだから」
アメジストの髪の女が。

ふいに、目頭が熱くなった気がした。
…よく、分からない。これは、何と言う感情だろう…?

「…好きにしろ…。死んでも知らんからな…」
なぜか顔を見られたくなくて、素っ気無く顔をそむける。
「死なないよ。勿論、お前も死なせない」
壮年の男が、そういって俺の肩に手を置く。男の手が、暖かかった…。
その暖かさは、今まで微かに震えていた俺の体の緊張を解くには十分で…。
一人ではないと…、そう、思えて…。

人の情が、こんなにもありがたいなんて知らなかった…。
こんなに嬉しいものだとは知らなかった…。
…知ろうとしなかった。
だって、必要ないと思っていたから…。



それを教えてくれたのは…、お前たち…。
……俺の、かけがえのない仲間……。




後書き

え〜、何ヶ月かめでようやく更新…。
話自体はもう出来てたんですけど、悉くUPするのを忘れていたという…(死)

でもこれ、なんか悪いもの食べたブルーのSSですね〜。
性格変わりすぎですね〜。
でもたまにはこんなブルーもいいかな〜なーんて思ったりvv
…しません??…そぉですか(泣)

ゲンさんの部分、どこを書こうか迷いました。
リュートとエミリア&ライザは即効で決まったんですよね〜。歌と料理…。
ゲンさんは特技って、剣技だけ…?思って、数日書くの止まりました。
結局、親父ギャグ言いそうだな思って(泥酔時)シャレにしました。
ぶっちゃけ苦肉の策でした(苦笑)




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