おばけ



ある暑苦しい日、このアロランディアの議長に祭り上げられたマリンは、
何をするでもなく只ボーっと外を眺めていた。
外では蝉が鳴き、その声が一層暑苦しさを高めていた。
「そういえば、あの時もこんな感じの日だったっけ…」
懐かしそうに眦を下げ、思い出す。




それは議長になってから初めて迎えた夏の日の事。

余りの暑さにボーっとし、あの隣国の王子・シリウスに連れ出され
肝試しに出かける羽目になった夏の日。





「マリン殿、怖かったら私にしがみ付きなさい。遠慮なんかせずにどーんとね」
「は、はい…」
あまりの事に目を白黒させ、言われるままにシリウスの服の裾を持つ。


暗い森は恐ろしい事を次々と連想させ、マリンは震えた。
考えるだけでも恐ろしいのに、突然目の前に黒い影が浮かび、マリンの恐怖は最高点に達した。
「きゃあぁぁあぁあああぁぁあぁぁぁぁ!!!!お、お化け、ゆーれいぃぃいい!!」
叫びながら、来た道を一人駆け戻って行った。



「懐かしいなぁ。あのあと、恐怖と疲労で倒れちゃったんだっけ。
その所為でプルート様に怒られちゃったし、悪かったよねぇ」
クスクスと笑い、再び空を見る。
空は目が痛くなるくらいに快晴で、雲ひとつない。
どこまでも青い空は、彼の瞳を思い出す…。
ほろ苦く、甘い気持ちも一緒に思い出す。
総て貴方がくれたモノ…。総て貴方がくれた優しい気持ち…。


……何時までも私を縛る、貴方の鎖……。





後書き

シリウス×マリンですが、私としてはシリウス←マリンでしょうか?
まぁ、そんな事はいいとして、果たしてこれは、『おばけ』でしょうか?
なんか、なってないですよねぇ。
この時マリンは30代と40代の間でしょうか?結構良い歳になってます。

BGM 地球ぎ




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