双子の森人



「今日はここまでだな」
夕暮れが近づいてきた空を見上げ、瑠璃はポツリとそう言った。
心なしか落ち込んで見える瑠璃を励ます。
「また明日頑張りましょ、ね?」
瑠璃はそんな砂羅に笑って頷いて見せた。
「すまないな。お前だって、やることがあるだろうに…」
「気にしないでいいわよ。どーせしがない冒険者なんだから」
二人が砂羅の家の前に近づく。
いつも瑠璃が砂羅を気遣い家の前まで来るのはすでに恒例になっていた。

「あれ?」
ドアの前に、慌しいペリカンがいた。
ペリカンは砂羅に気が付くと、駆け寄ってきた。
「たいへんよ!たいへん!!
ドミナの西の方に、ヘンなカボチャが大発生したの!!
きっと、悪ぅーい、悪ぅーい魔法使いが、
カボチャの大軍で私達をミナゴロシにする気よ!
ミーは安心してお手紙配達できないじゃない!
もう行かなきゃ!ミーはとっても怖くてドキドキしてるの!」

言うだけ言うと、ペリカンは去って行った。
後には、呆然と顔を見合わせる砂羅と瑠璃の姿だった…。



「ケケケケケ!」
ペリカンが言っていたドミナの西の空き地に、
双子と思われる子供がカボチャに囲まれていた。
「バド〜、そーゆー笑い方やめてー」
濃い赤紫色の髪をした6,7歳の女の子は、浅く嘆息をした。
「コロナ!お前も笑え!支配者スマイルだッ!ケケケケケケケケケッ!!」
同じ、赤紫色の髪の6,7歳のバドと呼ばれた男の子は笑い続ける。
「カボチャで世界を支配するの???バッカみたい!」
と、笑い続けるバドが砂羅に気付いた。
「あっ!!怪しいヤツ!!!追い返すぞ!コロナ!」
意気込んでフライパンを構えるバドとは対照的に、コロナは嘆息して言う。
「カボチャにやらせればいいじゃん」
「そーゆーのはこれからの課題だ!!」
言いながら、砂羅に突っ込んでくるバド。
そんなバドを見ながら、コロナは再び嘆息を漏らした。
「やれやれ…。頭、冷やさなきゃダメね」


多彩な、とは言いがたいワンパターンな魔法を面白がりながら砂羅はかわして行く。

魔法は体力と気力を使う。

威力、命中共に不安定な魔法を捌き、素早くバドに近づくと背後からバドの肩を触った。
「はい、掴まえたv」

背後からの突然の声に、バドは驚いて手にしていたフライパンを落とした。

持ち主の手を離れたフライパンは、そこに溜めていた魔力を四散させ、やがて消えて行った。


バドはショックから立ち直ると、尊敬の眼差しで砂羅を見詰めた。
「すげぇ!!オレを弟子にして下せぇ!」
バドの突然の申し出に少し驚いている砂羅に、コロナが歩き寄って来た。
「どうもすみませーん。私たち、双子の姉弟なんです。
私はコロナ、あっちがバド。
バドったら、イタズラばっかりしてるの」
やれやれとばかりに、再び嘆息を零す。
砂羅は、そんなコロナに優しい眼差しを送る。
そしてずっと期待の眼差しでこちらを見上げているバドに目をやってにっこりと笑った。
「いいよ。弟子にしてあげる。二人とも、家においでよ」
その言葉にバドは喜びコロナは呆れた。
「あわわわわ。なんて心の広いと言うか、なんと言うか…」

「私の名前は砂羅。 これでも一応冒険者やってます。よろしくね。
で、あっちでカボチャに座ってるのが瑠璃。
一応今の所彼が私のパートナーなの」
にこやかに紹介する砂羅にコロナとバドは顔を見合わせた。




後日

工房で様々な武具の手入れをしてしていた砂羅にコロナとバドが声を掛けた。
「ねえ師匠」
「砂羅でいーよv んで、なに?」
「瑠璃さんの事なんですが…、瑠璃さんって……珠魅…ですよ…ね?」
躊躇う様に上目がちに伺うコロナに砂羅は笑う。
「うん、そうだよv」
それが何?とでも言うように問い返され居心地悪そうにする。
「珠魅って知ってて、一緒にいるってこと?」
「一緒にいるのに、種の違いなんて関係ないじゃない。
私は瑠璃が気に入ったから、瑠璃の目的を手助けしてるの。
まあ確かに、慇懃無礼で腹立つこともあるけど、ね」
嬉しそうに微笑む姿に、コロナは何も言えなくなった。





後書き

えっと、ごめんなさい!
やはりこの二人は外せない…、と思ったのですが、難しいもんですねぇ。
へぼへぼです…。すみません。

砂羅は子供好き、と言うことで。

後日談は、魔法使いなので色んな知識はあるだろうと思いまして。
本だと、色々ある事ない事書かれてるじゃないですか。
子供ってそういう事を鵜呑みにしやすいから。
でも、本からの知識と見聞きの知識って違うから。
だから本でしか珠魅を知らない双子は躊躇った、と。
ちなみに師匠と声掛けたのはバドです。




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