告白 真砂子Side
いいかげん、彼を想うことに疲れてきた…。
心配してくれている、信頼されている、けれど冷たい…。
そんな態度に一喜一憂してきた。
でも…、それだけ。
どんなに願っても、努力しても、彼の特別にはなれない…。
どんなに祈っても…、彼の瞳は自分を映さない…。
彼の特別は…、彼の瞳に映るのは…、…自分の、親友…。
彼ではない『彼』に恋していた親友…。
『彼』のことを知り、彼のことを知り、とても泣いていた子。
後ろばかり見ていたあの子に渇を入れ、
励ましたのは、他でもない自分自身。
いつもの元気な笑顔が見たかったから…。
泣いて欲しくなかったから…。
そして彼女は『彼』ではない彼に恋をした。
自分と同じ人に…恋をした…。
そして改めて思い知らされる。
もう気付かないフリは出来なくなっていた。
本当は初めからわかってた。
この恋は実らないということを。
自分では、彼女に敵わないということを…。
皆あの子が好きで(当然だ。自分もあの子がとても好き)
皆あの子が大切で(とても大切なの)
皆あの子には笑顔でいて欲しいと願う。
(あの子が笑っていると、とても安心するから)
人を和ませるしか、取り柄のない子なのに、
なのに感じるこの感情は…、
あの子に対するどうしようもない程の劣等感…
妬ましくすら思った…、こんな自分がとても嫌い。
こんな醜い自分を、誰が愛してなどくれるでしょう?
だからもう、この想いに終止符を…。
愛しく想う、貴方の偽りのない心で終止符を打ってください…。
オフィスの電話が鳴った。
時間を確認すると麻衣が来る時間よりも幾分早い。
軽く舌打ちし受話器を取る。
「はい渋谷サイキックリサーチです」
「…ナルですの?あたくし、原ですわ。
今お時間よろしくて?」
聞き覚えのある声に、迷惑そうな声で告げる。
「…今は仕事中なのですが…」
「御手間は取らせませんわ。
…あたくし、ナルのことが好きですの。お返事頂けます?」
「………ふぅ…。申し訳ありませんが、
僕はあなたの事を考えている時間なんて無いもので」
嘆息してソファに腰掛ける。我ながら辛辣だと思ったが、
それよりも早くこの電話を切り上げたかった。
原さんに、全く好意を持っていないとは言わないが、
それは同業者の域を出ない程度の好意だ。
「ふふ。そう言うと思っていましたわ。ナル?
もしも麻衣を泣かせるような事を致しましたら、
あたくし、承知致しませんことよ?」
原さんは電話口で軽く笑い、
いつもと変わらぬ彼女のままで電話を切った。
「…麻衣?あたくしです。…会いたいですわ。
今、どちらにいらっしゃいます?
……バイトを休んでも、平気ですの?
無理なら……オフィスに、伺わせて頂きますけど…。
…平気なんですのね?…ありがとう、麻衣。待ってますわ」
待ち合わせ場所に行ったら、真砂子が窓の外を見ていた。
「ごめん、真砂子。遅れちゃったかな?」
席につきながらボーイさんにアイスティを頼む。
私を見止めると、真砂子は艶やかに笑う。
「麻衣。…ごめんなさいね、麻衣。
あたくし…、抜け駆けをいたしました。
ナルに好きだと言ってしまいましたわ」
振られてしまいましたけれどと、笑う。
まるで、肩の荷が下りたかのようにすっきりと…。
だけど、ナルを必ずモノにするんですのよって、
じゃないと許しませんわよって…、
言った途端漆黒の大きな瞳から大粒の涙を一筋零した。
「あら?可笑しいですわ…。全然、何ともなかったのに…。
振られても、何とも思いませんでしたのに…。
どうして、今更…?」
一生懸命涙を拭って、だけど最後には顔を覆って…。
そんな真砂子がいじらしくて、胸が苦しくなって…、
気が付いたら、私も一緒に泣いていた。
真砂子、元気出して。
そう言ってあたくしの手を握ってくれた。
あたくしと同じように、顔をクシャクシャにして、泣きながら。
莫迦ね…。貴女が泣くことないじゃありませんの。
そう思ったら、無性におかしくて、あたくしはくすくすと笑ってしまった。
不思議そうに見つめる麻衣と目が合い、
そして2人でひとしきり泣いて笑った。
後書き
真砂子大好きですよ〜vvv可愛いvv
真砂子が、麻衣を思う時の、「あの子」は、友人としての麻衣で、
「彼女」は、女性としての麻衣を表させてもらったんですが、
ぅ、う〜ん…、わかりずらい…。
真砂子サイド、ナルサイド、麻衣サイドで書かせてもらいましたが、
やっぱりわかりずらいんだよなぁ…。
読みずらくてごめんなさいっ!!
BGM 萩 小野不由美主上作品・出演岡野浩介さん
03.9.4 UP
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