そして僕は夢を見る
君があいつと幸せになればいいのにって、心底思った。
君があいつを友達だと言えばいいのにって、心底思った。
ドッチモ、ボクノスナオナキモチ……
いつも僕等は楽しそうに笑う。
あいつの言葉に怒りながらも、けれど楽しげに微笑む君が好き。
…でも、君と居る時のあいつの楽しげな、嬉しそうな顔を見て、ふと僕は気付く。
…ああ、お前も、君のことが、好き…、なんだね…。
僕はどうすれば良い?
剣も頭もあいつには遠く及ばない。
君のことが好きなのに、こんなにこんなに大切なのに…!
僕の表面は愛しい君に笑って言う。「あいつの大切な人になって」
僕の裏面は愛しい君に泣いて乞う。「あいつの大切な人になんかならないで」
表裏一体のココロ…。
どっちも願っている事で、どっちも願ってなんかいない事…。
君を見て、可愛いと思った。
親しくなるにつれて、どんどん大切になっていった。
愛しくて愛しくて、愛しさが達した時、僕は憎んだ…。
…君を…、あいつを……。
そして……すべてを……。
君もあいつもとても大切で、失いたくなんかなかった。
初めて神様に願ったよ。僕から大好きな二人を奪わないでって。
そして思った。
君とあいつが惹かれ合えば、僕は大好きな2人を失わないですむかもしれない。
…辛くても…。
そんな二人を見るのが辛くても…。
(ドウカ、オネガイ…。コンナコトサセナイデ…。ダレカボクヲトメテ…。)
でも、2人が一緒に居ると湧き上がる醜いこのキモチ…。
僕の中の醜い感情がゆっくりと、確実に頭を擡げていった…。
お前だって知ってるくせに、解ってるくせに…!…僕があの子を、どれだけ好きか。
(でも、気付いてないかもしれない)
君だって、本当は解ってるんじゃないの、気付いてるんじゃないの…?僕がどれだけ君が大切か。
(でも、君は鈍いから、解っているはずがない)
否定しながらも、疑いは更なる疑いを呼び、そしてまた僕の心に暗い影を堕としてゆく…。
本当は嫉妬していた。何でも出来るあいつに、昔から。
でも、だって、あいつは天才だから…。僕とは違うから…。
そう呟き己を慰める。
仕方ないって、思ったんだ…。
僕じゃ勝てないって。…今までが、そうだったから…。
あいつに負けるなら、しょうがないって諦めるフリをしてきたんだ、今まで。
形振り構わず求めて手に入らなかったら余計に惨めだ。
だからフリをしてきた。
…納得なんかしてないくせに、これ以上惨めになりたくないから!
…僕はずっと恐れ願っていた事が頭を掠める。
今の関係が、壊れることが…。
今の関係を、この手で壊すことが…。
震える声で呪文を呟き呪をかける…。
これで良いんだと満足すると共に、悲しげな君の顔が頭に過る。
激しく頭を振り、君の面影を追い払う。
振り払っても振り払っても消えない愛しい人の顔…。
間違っていない、僕は間違ってなんかいないと呪文のように繰り返す。
…………モウ、ヒキカエセナインダ……………。
…そして、運命の夜が明けてゆく…。
僕の所為で苦しみ倒れ臥してゆく人々…。
それを無感情な顔で見下ろす。
やがて襲ってくる不快感と激しい喉の渇き…。
吐きたいのに吐けないもどかしさ…。
大丈夫かなんて聞かないで…!
そんな不安げな、心配そうな顔を向けないで…!
…決心が、揺らいじゃうよ…。
これから僕は沢山の人を、君とあいつを、最悪な形で、裏切るんだから…。
己自身がつけた胸元のバッチは、せめてもの免罪符として………。
「僕は、僕は大嫌いだ!」
お前の事も、騎士院も魔法院も神殿も、このアロランディアすべてが!
だけど好きだった…。
……とても……!
お前の事も、騎士院も魔法院も神殿も、このアロランディアすべてを!
好きだから許せなかった。好きだから我慢できなかった。
…僕の好きなモノが腐って往くのを…!
あいつを刺し、僕は踵を返す。
走りながら、僕は夢を見る。
もしかしたらと、在り得ない未来を夢見て…。
僕の元へ来て欲しい。来て欲しくない。
怪我をしたあいつを振り切って…。
…そして僕は夢を見る…。
……アマイユメヲ……。
後書き
ごめんなさい、書いてるうちに分け解んなくなりました…。
(起承転結なんて考えないからなんだけど、頭こんがらがるんだもん。…莫迦だから…。)
そして、最後片仮名にしたら、…リュート死んでるっぽく感じてしまったのは私だけ!?
ぁいや漢字、片仮名、平仮名で後日考えたら、印象が全然違うんですよねぇ、やっぱり。
漢字は追っかけて来ない、片仮名死んでるっぽい、平仮名追っかけて来た。てなふうに。
(そして死んでるっぽいままなのね…。不憫なリュート…。)
リュートの独白、なんか弐重人格者みたいになっちゃったなぁ…(^^;
でも、リュートは好きだけど嫌い、嫌いだけど好きという感情で揺れ動いていたと思うのですよ。
あ、バッチの呪は、シリウスの部下がかけたんでしょうね。
それが何でリュートになっているかは、制作上の秘密ということで(苦笑)
主人公は、マリンでもアクアでも葵でもお好きな方をお選び下さいv
そしてそして、この話がアークルートかリュートルートかもお好きにどうぞ。
ちなみに私が想像してたのはマリンです。
リュートといったらマリンだと思うヤツなので…。
この話を考え、打ち、読み直しをしている時、櫻井さんの声で想像してしまいましたぁ。
こんな話で想像してごめんなさい。
BGM ZABADAK-live-
03.7.31UP
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